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2008年5月 4日 (日曜日)

酒虫と聊斎志異

 前回からの三月精で、「酒虫(しゅちゅう)」が登場していますね。
 この酒虫、「聊斎志異(りょうさいしい)」という、清時代に書かれた所謂「不思議な話」を集めた本に出てくるのが元ネタになります。
 私が子供の頃は(年寄りっぽい表現だなぁ…(汗))まだライトノベルが普及し始め、という程度で、この手のファンタジー系というか不思議な物語系の本が不足しており、書店の本では足りずに、古典文学?のこの「聊斎志異」まで手を出して読んでいました。その中でも、この「酒虫」の話は、話の展開もそうですが、特に最後の「オチ」が印象的だったので、短い話ながら今でも記憶に残っています。

 そんなわけで、今回、酒虫が出てきたのを機に、改めて聊斎志異を取り寄せて読んでみました(図書館で借りるつもりが、無かったので結局買う羽目になりました…orz)。改めて、元ネタの「酒虫」の概要を紹介して、この話の示唆する事…そして、この回で神主様が何を伝えたかったのか(笑)を考えたいと思います。

※厳密には、今回の「酒虫」の元ネタは、この「聊斎志異」から題材を得た芥川龍之介の「酒虫」の方だと思われます。芥川龍之介は「河童」も書いていますし…。
基本的には話の内容は同じですし、(同じ本…というか「巻」に掲載されているかは判りませんが)元ネタを愉しむためにも、芥川龍之介の作品を読んでみるのも一興ではないでしょうか。確か著作権が切れているので、ネットでも読めたと思います。
 ご存じの方も多いと思いますが、芥川龍之介の「河童」は良く読むと「河童にとり」が出てきますよ~。


 さて、「酒虫」の話の概要ですが、こんな感じです。

1.働きもせず、大好きなお酒ばかりを毎日飲んでいる男がいた。
 この手の所謂「アル中」系の話では、「働きもせずに日頃から酒ばかり飲んでいるので、家計は火の車」という展開が一般的…な筈なのですが、この話では、わざわざ「家が金持ちで、所有している畑から十分収入があるので、別にお酒飲みまくってても全く問題が無い」と語られています。ここが、普通とは違う所です。

2.この男は、いくら飲んでも酔わず、毎日一甕(かめ)を開けてしまうほど酒を飲みまくっていた。
 ……東方をやっていると、いろいろと思い当たる節のある属性ですね(笑)

3.男の元に旅の僧侶が来て、男の酒好きは「酒虫」に取り憑かれているせいだと告げる。男は治療を依頼する。

4.僧侶は男を縛り付けて、目の前にお酒を置く。男は喉がからからになるが縛られているので酒が飲めない。のどの渇きが限界になったとき、喉の奥から「酒虫」が飛び出してきた。
 前編の最後に永琳がちらっと言っていた方法ですね。
 個人的には「酒虫」はもっと細くてミミズみたいな感じかな、と思っていたのですが、三月精の絵を見ると、あんな感じの方が「らしい」かな、という気もします。

5.男は謝礼を申し出るが、僧侶は断り、その代わりに「酒虫」を貰い受けた。
 その理由は「酒虫」を水に入れてかき混ぜると美味しいお酒になるからだとの事。このあたりも三月精と同じですね。


 …で、ここまでは別に問題ない?のですが、不思議なのが最後の結末…「オチ」です。「酒虫」という奇怪な生物自体が出てくる、という事以上にこの理不尽な?結末が不思議で、私の記憶にも「変な話」として長く残る事になりました。

6.「酒虫」がいなくなってからというもの、男は酒嫌いになってしまった。その後、男は次第にやせ衰え、家も次第に寂れて行く事になったのだった。

 これですよ、この理不尽なオチ!
 普通、アル中を治療してもらったのだったら、その後は「男は真面目に働くようになって家は益々栄えました。めでたしめでたし」となる筈なのですが、結末はその逆なのです。
 普通なら、貧乏+酒浸り→「酒虫」を取り除いて酒癖が直る→金持ちに……が昔話の有るべき形だと思うのですが、逆パターンなのです。不思議な話です……。


 で、お酒との絡みが多い東方のファンとしては、この元ネタから考えると、今回の三月精、ものすごく示唆に富んだ話である様な気がします。
 「酒虫」が奇抜なので印象に残ってしまいますが、実は考えなければならないのは、好きなお酒を断った結果、やせ衰えて家も傾いたという事です。この話を持ってきた事にどのような意味があるのか。何を示唆しているのか。
 過ごしやすい春の夜長。考えを巡らせてみるのも一興ではないでしょうか。

 …投げっぱなしで終わっているのは、私にも答えが良く判らないからだったりします(笑) このオチが何を意味するのか?は、芥川龍之介版の「酒虫」でも龍之介自身がいろいろと考察を書いていたりします。個人的に私が支持するのは、そのうちの一つ……この解釈でしょうか。東方的にもこれがいちばん「らしい」と思います。


「酒を飲むのは男の『人生』そのもので、酒=男であり、酒を除いてしまっては何も残らなくなってしまう。酒が飲めなくなった結果、男の存在意義は失われて、『からっぽ』な状態になってしまった。家業が傾き、貧乏になるのも当然の帰結である」

※今回参考にした資料
■図書館にあった「芥川龍之介全集」…のうち、「酒虫」が載っている巻

■「聊斎志異」蒲松齢 立間祥介訳 岩波文庫
 (上下巻になっており、「酒虫」は下巻に入っています)

>以下、5月6日追記

 三月精をもう一度読み返したのですが……それにしても、萃香の角は大きいなぁ(笑)

 改めて調べてみると、芥川作品は著作権切れの関係で「青空文庫」になってゐますね。

■芥川龍之介「酒虫」
 http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/161_15133.html

 ちなみに原典の「聊斎志異」版は文庫本で2ページで終わる非常に短い話です。芥川龍之介が自身の作品にする際に、かなり「膨らませて」いますね。最後の考察も、芥川龍之介版にしかないものです。

 ついでに「河童」も…

■芥川龍之介「河童」
 http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/69_14933.html

 タイトルの下にある「どうか Kappa と発音してください。」が、サブタイトルとしてついています。芥川龍之介は何を考えてこの文章を……?
 あと、既述の日記の通り、にとりの名前の元ネタ?と思われる「河童にとり」が文中に出てきます。

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